賃貸借の貸主・借主死亡後、共同相続人の1人が単独で契約解除ができるか
1 はじめに


① 部屋を貸していた大家さんが亡くなって、相続人が複数いるケース(賃貸人が複数となったケース)
② 部屋を借りていた借主さんが亡くなって、相続人が複数いるケース(賃借人が複数となったケース)
これら①②のケースで、
● 契約の解除・解約を決める場合
● 相手方に契約・解約を求める場合
どのようにすればいいのでしょうか。
参考文献・野々山哲朗共著『Q&A 未分割遺産の管理・処分をめぐる実務』(新日本法規)
2 遺産の共有についての考え方
遺産の共有についての考え方については、
●「相続が発生すると、遺産分割が成立するまでの間、共同相続人はその相続分に応じて遺産を共有(民法898条・899条)することになります。」
●「この場合の権利関係について、通説・判例は、物権法上の共有の規定が類推適用されるとしています。」
となっています。
そこで、共同相続人は
● 遺産全体を相続分に応じて使用ができます(民法249条)。
● 各人が遺産の保存行為(修繕等)を単独で行なうことができます(民法252条5項)。
● 管理行為(利用、改良行為)は持分の過半数で決することができます(民法252条1項)。
● 遺産の売買などの処分行為を含む共有物の変更は、相続人全員の同意が必要となります(民法251条)。
(上記「Q&A 未分割遺産の管理・処分をめぐる実務」118頁より、引用、参照。)
3 ①賃借人が複数となったケース
⑴ <契約の解除・解約を決める場合>
共有物の賃貸借契約において共有者の1人が単独での契約解除ができるのでしょうか。
賃貸借契約を解除することは、「共有物の管理行為」とされています(最高裁昭和39年2月25日第三小法廷判決)。
したがって、「共有物の管理行為」に該当する場合、共有持分の過半数の同意で決することになります。
⑵ <相続が発生した相手方(賃借人)に契約・解約を求める場合>
では、賃貸人が、相続によって賃借人の地位が複数人に引き継がれた場合、賃貸借契約・解約を求める場合にはどうすればいいのでしょうか。
この場合、賃貸借契約の解除若しくは解約の意思表示は、原則として、共同相続人全員に対してすることになっています(最高裁昭和36年12月22日第二小法廷判決) 。
4 ②相続によって賃貸人が複数となったケース
この場合賃貸人が複数となっていますが、賃借人は賃貸借契約の解除若しくは解約の意思表示を、原則として、賃貸人の共同相続人全員に対してすることになります(前掲・最判昭和36年12月22日) 。
5 さいごに
賃貸借契約に相続が関係する場合、法的には、意外と複雑になります。
関連として別稿「賃貸借の借主が死亡した後の賃料の支払いについて」もご参照ください。
こうした案件でお困りであれば、相続案件にも慣れた弁護士にご相談だけでもご検討されることをオススメいたします。