賃貸借の借主が死亡した後の賃料の支払いについて
1 はじめに 2 ① 賃借人死亡後の賃貸借契約終了について 3 ② 賃借人の生前の未払い賃料を誰が支払うべきか(誰に請求すべきか。)。 4 ③ 賃借人死亡後、賃貸借契約が、終了しない場合、亡くなられた後の賃料は、誰が支払うか(誰に請求すべきか。)。 5 さいごに
1 はじめに


アパートを借りていた方(賃借人)が突然亡くなり、相続人は複数います。
よくあるケースですが、このような場合、①賃貸借契約の終了は自動的に終了するのでしょうか。
本稿では、関連する以下の2点に触れながらご紹介をさせていただきます。
② 賃借人の生前の未払い賃料を誰が支払うべきか(誰に請求すべきか。)。
③ 賃借人死亡後、賃貸借契約が、自動的に終了しない場合、亡くなられた後の賃料は、誰が支払うか(誰に請求すべきか。)。
※ 参考文献・野々山哲朗共著『Q&A 未分割遺産の管理・処分をめぐる実務』(新日本法規)
2 ① 賃借人死亡後の賃貸借契約終了について
⑴ まず、賃貸借契約について、借主が死亡しても賃貸借契約は自動的には終了しません。賃貸借契約における賃借人の地位(借地権、借家権)は相続の対象となります。
⑵ 「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」(民法896条) と規定されており、借地権・借家権も被相続人の財産として相続の対象となります。
⑶ 相続人が複数名の場合、借地権・借家権の権利関係はどうなるのでしょうか?
「相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する。」(民法898条) と規定されています(借地権・借家権は準共有。)。
各相続人持分割合は、「各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」(民法899条) ことになります。
そのため、借地権・借家権は、その権利の遺産分割が終了するまでは、法定相続分に応じて、相続人の方が皆で持ち合う(権利義務を承継する)ことになります。
3 ② 賃借人の生前の未払い賃料を誰が支払うべきか(誰に請求すべきか。)。
賃借人の生前の未払い賃料は、賃借人の相続人の方が、それぞれの相続分に応じて分割して負担することになります。
賃貸人は、それぞれの相続人に対し、相続分の割合に応じた未払い賃料の請求をすることになります。
たとえば、
相続人が子3人(法定相続分 1/3ずつ)
生前未払い賃料が、60万円(賃料月額30万円。未払い2か月分)
の場合
子供が20万円ずつ支払い義務を負担することになります。
4 ③ 賃借人死亡後、賃貸借契約が、終了しない場合、亡くなられた後の賃料は、誰が支払うか(誰に請求すべきか。)。
既に述べてきたとおり、賃借人が死亡しても、賃貸借契約は自動的には終了しません。
そのため、亡くなられた後の賃料は、遺産分割協議により特定の相続人が借地権・借家権を相続するまでの間は、相続人が各人の相続分の割合に応じて承継しています。
ところが、相続開始前に既に発生していた賃料とは異なり、相続発生後の賃料は、相続人全員が賃料の支払いについて全額の支払い義務を負うことに注意が必要です(大判大正11年11月24日)。
● 亡くなられる前に発生していた賃料は、「可分債務」(分割可能な債務)
● 亡くなられた後に発生した賃料は、「不可分債務」(共同相続人が負担する義務の全部を負う債務)
という違いがあるため、亡くなられた後は、相続人全員が賃料全額の支払い義務を負うことになっています。
その結果、賃貸人は、相続人の1人に対してであっても、賃借人死亡後に発生した賃料の全額を請求できることになるのです。
上記3の例では、
法定相続人子3人 (法定相続分1/3ずつ)
賃料月額30万円
でしたが、各相続人が月額10万円の負担割合であっても、賃借人は法定相続人の1人に月額30万円全額を請求でき、その相続人は月額30万円の支払い義務が生じることになります。
5 さいごに
今回説明してきた内容は、法的な考え方になります。
また、法的には、賃貸人(たとえばアパートの大家さん)が(アパートの)賃借人死亡後に契約を解除するためには、原則的に賃借人の全ての相続人に対して、契約解除を伝えることになります。
また、別稿「賃貸借の貸主・借主死亡後、共同相続人の1人が単独で契約解除ができるか」もご参照ください。
こうした案件でお困りであれば、相続案件にも慣れた弁護士にご相談だけでもご検討されることをオススメいたします。