太陽光発電設備(ソーラーパネルなど)の相続はどうやって進めるのか
1 はじめに


東日本大震災以降、国の施策もあり、太陽光発電の普及が一気に進みました。特に売電を目的として、太陽光発電設備への投資をおこなう方も増えたと思います。
今回は、太陽光発電設備(ある程度事業性の見込める10kwから50kw未満の設備)の相続について、ご紹介をさせていただきます。
※10kw未満の場合は、主に一般家庭での利用が多く、相続の場面でも問題となることは少ないと思われます。
2 相続において「太陽光発電設備」が不動産と別の財産といえるか
相続対象の建物や土地に太陽光発電設備が設置されていた場合、その太陽光発電設備は、不動産と一体のものとして自動的に建物や土地を相続した人のものになるのでしょうか?
まず前提として、<相続人間の遺産分割>と<行政庁への変更届や(電力会社への名義変更)>があることです。
事業者として売電をしている場合、後述の経済産業省(資源エネルギー庁)への「事後変更届」において、「※ 太陽光パネルは、建物付属設備として認められているものではないため、相続の際は、建物と別に明示したり、太陽光パネルを含む全てを相続対象とした記載とするなど、相続対象に発電設備が含まれていることが確認できることが必要です。」(引用元・資源エネルギー庁HP 「変更内容ごとの変更手続の整理表」2024年4月15日更新版)とされており、相続に伴う名義変更の場合、届け出の手続き上は、太陽光パネル(太陽光発電設備)を誰が取得するのか明示しておかなければなりません。<行政庁への変更届>
相続人間の遺産分割協議の場面でも、原則的には不動産と太陽光発電設備は、別個の財産です。<相続人間の遺産分割>
そのため、相続対象の建物や土地に「太陽光発電設備」が設置されていた場合、その太陽光発電設備は、不動産と一体の物として自動的に建物や土地を相続した人のものにはなりません。
ただし、屋根一体型のソーラーパネルの場合には、建物の構成要素である「屋根」といえますので、遺産分割の場面では建物と一体と考えてよいと思われます。
3 「太陽光発電設備」の相続手続きをどう進めるか
⑴ 【遺産分割協議で太陽光発電設備についても決めること】
まず、遺産分割協議において、太陽光発電設備を誰が取得するのか決めることになります。
⑵ 【電力会社の契約名義を変更すること】
お亡くなりになった方が太陽光発電について、「売電契約」を締結していた場合、ご相続人様名義に変更・契約締結をする必要があります(詳細は各電力会社にお問い合わせ下さい。)。
たとえば、中国電力の場合、「電力受給契約に係る変更申込書(事業譲渡を含む名義変更・振込口座変更)」と以下の添付資料が必要となるようです。
①被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本 (附票を含む。附票がない場合は住民票の除票も可)
②法定相続人全員の戸籍謄本 (①②の代用として法務局より発行された法定相続情報でも可)
③法定相続人全員の印鑑証明書 ④遺産分割協議書又は相続人全員の同意書
(参考・中国電力HP)
⑶【資源エネルギー庁の認定名義を変更すること】
売電をするにあたり、太陽光設備を設置する場合、名義変更等をする場合には、資源エネルギー庁へ申請をして認定を受け、届け出をする必要があります。
資源エネルギー庁の代行として申請を受け付けている機関がJPEA(ジェピア)代行申請センターです。
<資源エネルギー庁への申請・届け出>にあたっては、JPEAへご名義変更の申請、設備がFIT(固定買取期間内)なのか卒FIT(固定買取期間終了)なのかによって、手続きが異なります。
●<FIT(固定買取期間内)に相続手続きをする場合(一般的なケース)>
・「事後変更届」とともに添付資料を提出することになります。
添付書類としては、以下のものを揃える必要あります。
①被相続人(亡くなられた方)の戸除籍謄本
(附票を含む、附票がない場合は住民票の除票でも可。)
②法定相続人全員の戸籍謄本
※①②の代用として法務局より発行された法定相続情報でも可
③法定相続人全員の印鑑証明書
④遺産分割協議書又は相続人全員の同意書 (相続証明書)
(注 「太陽光発電設備」を誰が相続するか明示)
4 さいごに
遺産分割協議において、事業性のある「太陽光発電設備」の相続は問題となりやすいです。
今後、「太陽光発電設備」の相続問題は、相続に限らず離婚の財産分与の場面でも増えてくることが予想されます。
ソーラーパネル、パワーコンディショナーなどの太陽光発電設備の相続財産評価も複雑であり、遺産分割などでお困りごとがございましたら、相続案件にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。