「遺言執行者」を遺言で指定するメリットについて
2 「遺言執行者」とは?
相続が発生し、遺言の内容を実現させることになりますが、遺言者に代わって遺言を実行する人が必要となります。
そこで、遺言の内容を実現する人を、生前に遺言で指定をしておきます。
「遺言執行者」は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しており、遺言者の想いを叶えてくれる存在です。(民法第1012条第1項)
3 「遺言執行者」を遺言で指定するメリット
⑴ 遺言者の方が「遺言執行者」を指定する場合には、必ず遺言によらなければなりません。
⑵ 「遺言執行者」が遺言で指定されていない場合や指定されていた「遺言執行者」自身が亡くなった場合には、家庭裁判所に「遺言執行者」の選任の申立てをすることができます。
遺言の中に「遺言執行者」を指定しておけば、遺言者がこの人に遺言内容の実行を任せたいと考えた人が遺言内容を実現してくれます。さらに、手続き的にも家庭裁判所への「遺言執行者」の選任申立てをしなくてよいメリットがあります。
4 「遺言執行者」を定めておくメリット
⑴ 遺贈(相続人でない者に財産を与えたい場合)のときにメリットがあります。
たとえば、お世話になった他人に不動産やお金など自分の財産を渡したいとき、「遺言執行者」を定めておきます。
「遺言執行者」を定めておけば、お世話になった他人に「遺贈」という形で財産を渡してもらえます。
特にメリットがあるのは、不動産登記移転の場面で、「遺言執行者」が遺贈の相手に対して単独で登記移転手続きを実現してくれます。
「遺贈」したいとき、「遺言執行者」がいなければ、相続人が登記手続きをすることになります。つまり、「遺言執行者」がいれば、相続人の実印の捺印や印鑑証明書を取得する必要もありません。
⑵ 複数・多額の遺産の場合、手続が複雑になることもあり、その相続手続きを「遺言執行者」に単独で任せることができます。
遺産が複数あり、遺産額が多い場合は、不動産の名義変更、預貯金の解約、株式の名義変更、暗号通貨への対応が必要になるなど、それぞれの財産ごとに手続きが複雑になります。
「遺言執行者」を指定しておけば、相続に関する手続きを基本的に単独で執行することができるようになるので、円滑に手続きを進めることができるようになります。
⑶ 相続人間に対立がある場合に手続きを単独進めることできます。
相続人の中には、遺産の承継において手続きに協力しない相続人もいます。
特に、遺産の分配について遺言内容に不公平感を感じる相続人は手続きへの協力に消極的な態度を示すこともありえます。
そうなると、相続手続きがなかなか進まないということになりますが、「遺言執行者」を選任しておけば、単独で必要な手続きを実現できます。
5 さいごに
「遺言執行者」につきましては、自分の意向に沿ったかたちで遺言内容の実現するために必要性が高いといえます。
また、専門家に「遺言執行者」を指定しておくことで、煩雑な手続きや相続人間の紛争に関係なく遺言を実現することができます。
「遺言執行者」を指定するか、誰を指定するかについて、弁護士に事前にご相談をされることをおすすめいたします。