相続で問題となる『寄与分』(特別の寄与)について

文責:弁護士 岡﨑伸哉

作成日:2024年11月29日

1 はじめに

 被相続人の生前に、被相続人の財産のために相続人らの貢献『寄与分』の概略民法第904条の2)についてご紹介させていただきました。

 今回は、『寄与分』の要件

  ① 共同相続人による寄与行為の存在

  ② 寄与行為が特別の寄与であること

  ③ 被相続人の財産の維持又は増加

  ④ ①と③との間に因果関係があること

のうち、「② 寄与行為が特別の寄与であること」を説明させていただきます。

2 「特別の寄与」について

 「特別の寄与」については、通常期待される程度の扶養義務の範囲を超えた貢献が『寄与分』として考慮されます。

 

  ● 相続人と夫・妻関係にある方については、民法752条で求められている協力扶助の程度を超えた寄与

   

  ● 相続人と子の間では、民法730条で求められている相互扶助の程度を超えた寄与があることが必要とされます。

 

 ご相談のあるケースで「特別の寄与」にあたるかどうか検討してみましょう。

 

例1) 夫婦間で長年生活をし、妻が家事労働をし、子を養育してきた場合、「特別の寄与」は認められるのでしょうか。

    → この場合、民法752条で求められている通常の協力義務を超えているとは難しく、「特別の寄与」は認められないといえます。

 

例2) 夫が個人事業を営んでおり、妻が無償で個人事業を手伝ってきた(その結果、夫の資産を増加させた)というケースでは「特別の寄与」は認められるのでしょうか。

    → この場合、民法752条で求められている相互扶助の程度を超えた寄与(特別の寄与)があったと認められると考えます。

 

例3) 被相続人である父親の個人事業を、子が長年に渡り手伝ってきたケースではどうでしょうか(生活費は同居の父親が負担、子には小遣い程度は渡されていた。その結果、父親の資産の減少が免れた。)。

    → まず、子が父親の個人事業を手伝っている場合、通常の労務報酬を得ていた場合には、正当な労務対価を得ていたと言え「特別の寄与」が認められる事情として消極的です。本事例では、生活費をみてもらったとはいえお小遣い程度ですので、「特別の寄与」があったと認められると思います。

3 さいごに

 今回は『寄与分』を検討する上で「特別の寄与」につきましてご紹介させていただきました。今後も回を分けてご説明をさせていただきます。

 必要以上に自分のために尽くしてくれた妻、事業への貢献をしてくれた子のために「遺言書」を作成しておくことも重要です。

 『寄与分』をご請求したい方もいらっしゃると思います。

 その際には、相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメいたします。

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