『特別受益』がある場合の遺産分割協議の遺産の算定について
1 はじめに
遺産分割調停・審判などでは、『特別受益』がある場合、「相続開始時」と「遺産分割時」の評価の2点を求められることがあります(「寄与分」も同様です。)。
今回は、『特別受益』がある場合の遺産分割において、財産の評価時点について事例も交えながらご紹介させていただきます(「遺産分割協議とは? その進め方について(遺産の評価基準はいつ?)」の関連記事もご参照ください。)
)。
2 遺産分割における「遺産の評価基準時」について
遺産の評価の基準時につきましては、「相続開始時(被相続人が亡くなった時)」と「遺産分割時」との2つの考え方があります。
遺産の評価時点は、「遺産分割時」によることが実務の大勢と言われています。
(※ 相続人間の合意があれば、評価時点を「相続開始時」で決めることも多いです。)
3 特別受益がある場合の「遺産の評価基準時」
『特別受益』がある場合の評価基準については、「相続開始時」を基準とするのが実務的な考え方となります(最判昭和51年3月18日判決)。
最判昭和51年3月18日判決では、「被相続人が相続人に対しその生計の資本として贈与した財産の価額をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産に加える場合に,右贈与財産が金銭であるときは,その贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもつて評価すべきものと解するのが,相当である。」としています。
4 『特別受益』がある場合の遺産分割における算定
このように、『特別受益』がある場合には、「相続開始時」を基準としてみなし財産を算出するため、それ以外の相続財産についても、「遺産分割時」のほかに「相続開始時」の評価も必要となるのです。
『特別受益』がある場合の相続分の例を算定してみます。
<お父様Aが亡くなり、相続人としてお子さんB、Cがいるケース>
Aが亡くなられた際の相続財産として、
● 相続開始時の評価額として、5000万円の遺産があります。
● Cが生前に800万円の財産(不動産)について生前贈与を受けています。
※ その不動産は、「贈与時」は800万円の不動産価格でしたが、「相続開始時」には、1000万円の価値となっていました。
その場合、
みなし相続財産:5000万円+1000万円=6000万円
6000万円÷2=3000万円
B:3000万円
C:2000万円(※ 生前贈与1000万円の価値として受領済みとします。)
の相続開始時評価の遺産をそれぞれ取得する算定となります。
● そして、遺産分割時の遺産の評価額が、5000万円から6000万円になっていた場合、以下の修正の算定をします。
B:6000万円×(3000万円/5000万円)=3600万円
C:6000万円×(2000万円/5000万円)=2400万円
(※ Cは生前贈与として、相続時1000万円の価値の不動産は受領済み。)
をそれぞれ遺産の現実的な取得として計算します。
5 さいごに
「遺産分割協議」において、相続財産の評価は問題となります。
そのため、相続案件にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。