法定相続人がいない場合の手続の流れ
1 法定相続人がいない場合のパターン
法定相続人がいない場合と一口にいっても、様々なパターンがあります。
そもそも被相続人に配偶者も子供もおらず、親や兄弟もいない場合には、法定相続人がいないことになります。
また、法定相続人はいたものの、法定相続人全員が相続放棄をしたことによって、相続する人がいなくなったというケースもあります。
さらに、欠格や廃除により相続人がいなくなってしまうケースもあります。
欠格とは、相続人が被相続人を殺害したり、被相続人に脅迫して遺言を書かせるといった危害を加える行為を行った場合に、その相続人の相続権が失われる制度です。
廃除とは、被相続人に対して虐待や著しい非行を働いた場合に、被相続人の意思に基づき相続人の相続権が失われるという制度です。
相続人がいたとしても、欠格や廃除によって事後的に相続人が相続権を失い、結果として誰も相続する人がいなくなるケースがあるのです。
このような場合には、法定相続人がいなくなってしまい、相続人が不存在ということになります。
2 相続財産清算人の選任
上記のようなケースで、相続人がいない場合、相続財産は法人となります(民法第951条)。
そして、利害関係人又は検察官の申し立てによって、相続財産清算人が選任され、相続財産を管理・清算することになります。
3 清算手続の流れ
相続財産清算人が選任される場合、家庭裁判所は、①相続財産清算人が選任されたことと、②相続人捜索の公告を行うことになります(最低6か月)。
相続人捜索の公告期間が満了し、その期間内に相続人の申し出が無かった場合には、相続人の不存在が確定します。
また、同時に被相続人に対して債権者がいないかを探すために、家庭裁判所は、③相続債権者捜索の公告(最低2か月)も行うことになります。
相続債権者捜索の公告期間満了後に、各債権者に対して遺産から弁済がされることになります。
なお、特別縁故者として申し出る者がいる場合には、相続人の不存在が確定してから3か月以内に財産分与の申し立てをする必要があります。
上記の一連の手続きが終わったのち、残余財産がある場合には、残余財産は国庫に帰属することになります。
遺産の相続人がいるかどうか、相続人がいない場合にどのような流れになるのか詳細を知りたい場合には、相続分野に強い弁護士に相談されることをおすすめします。