「遺留分侵害額請求権」の行使方法について
1 はじめに
遺留分制度は、相続財産のうち、その一定割合を一定の相続人に保障する制度です。
遺留分権利者となった相続人は、まずは、「遺留分侵害額請求権」を行使する意思を受贈者又は受遺者(簡単にいえば、相続財産を多く得た人)にしないといけません。
「遺留分侵害額請求権」は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈(遺言により財産を無償で譲ること)があったことを知った時から1年で、時効により消滅します(民法1048条前段)。葬儀や四十九日、受贈者又は受遺者が言ってくるだろうと相手の出方を待っているうちに時効となってしまうことがよくありますので注意が必要です(お役立ち情報:「遺留分侵害額請求権」の時効について)。
2 「遺留分侵害額」の行使方法について
「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、請求権の行使しないといけません(民法1048条)。
民法は遺留分の侵害額請求の行使方法について、何ら定めていません。
「遺留分減殺請求権(民法改正前。現在は「遺留分侵害額請求」)の行使は、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、受贈者又は受遺者に対する意思表示によってなせば足りる」としています(最高裁昭和41年7月14日判決)。
「遺留分侵害額請求」の行使方法は、受贈者又は受遺者に対する意思表示でよく、口頭でもかまわないことになります。
しかしながら、1年間の消滅時効との関係で、「遺留分侵害額請求」を行なったのか、行なった時期はいつかが問題になりえますので、「遺留分侵害額請求」の意思表示は、書面(内容証明郵便)で行なうことが実務上一般的です。
3 「遺留分侵害額請求」の具体例について
⑴ 「遺留分侵害額請求権」の行使については、民法改正前の「遺留分減殺請求」のときから、その行使の意思表示が曖昧な場合(特に1年の消滅時効期間が経過した後)、「遺留分減殺請求」行使の意思表示と認めていいのかについて、判例・裁判例の蓄積があります。
明確に遺留分の意思表示がなされていないということで、一般的に「黙示の遺留分減殺請求(民法改正後・「遺留分侵害額請求」についても当てはまります。)」と呼ばれています。
⑵ 遺産分割協議の申し入れを、遺留分侵害額請求の行使と考えられるか。
① 遺産分割協議の申し入れと遺留分侵害額請求は、法律上異なるので、遺産分割協議の申し入れが、当然に、遺留分侵害額請求の意思法事を含むとはいえません。
ただ、相続人の1人に対して、全財産が包括遺贈(全て相続させる)となった場合には、他の相続人が遺留分侵害額請求をしない限り、相続財産の分け前を受け取ることはありえません。
そこで、「被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべきである。」(最高裁平成10年6月11日判決)
とされており、例外的に黙示の遺留分遺留分減殺(侵害額)請求を認める余地があるとされています。
⑶ 遺言の無効を主張した場合
「遺留分侵害額請求」というのは、一般的に、遺言等が有効な場合で他の相続人等に財産が帰属したことを前提に、その遺留分侵害額請求の行使がされます。
つまり、遺言等が有効であることが前提です。
では、その遺言が不正になされた、遺言は無効であると主張している場合は、「遺留分侵害額請求権」の行使はどうなるのでしょうか。
こうした場合、遺言の無効を主張している場合には、黙示的な遺留分侵害額請求を認めないとする見解もあり、実務的にもそう考える裁判官もいます。
そこで、このようなケースでは、内容証明郵便で、遺言の無効を主張しつつ、仮に遺言が有効なら、遺留分侵害額請求を行使するということも記載し、行使の意思を示すことで対応をしています。
4 さいごに
近年、遺言書を作成される方も多くなっており、遺言書によって不公平を感じる方から遺留分侵害額請求のご相談されるケースも多くなっております。
遺留分について関心がおありの方は、相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。