遺留分侵害額請求への生前対策 【第4回】 (対策5 オーナー株式の譲渡や死亡退職金の活用)

文責:弁護士 岡﨑伸哉

作成日:2024年08月30日

1 はじめに

 今回は「遺留分侵害額請求」に対し、生前に何らかの対策ができないかについて、第4回目の説明をさせていただきます。

 「この相続人には絶対渡したくない、できるだけ少なくしたい」などのご希望を持たれる方も一定数いらっしゃいます。

 そのため、そうしたご希望に添った対策も必要となってきます。

 今回述べる対策は、第1回第2回第3回までに提示してきた対策よりは、一般的ではありませんが、遺留分対策に十分に有効となる場面があります。

2 会社株式の譲渡について

         <被相続人が会社のオーナー(株主)のケース>

 被相続人となりえる方が、会社のオーナーで、その会社の株式の大半を保有していることはよくあります。

 会社経営の中では、事業会社の決算がよくない、会社の資産価値が落ちている等で会社の株式の評価が落ちる時期があります。

 その株価が落ちた時期に、その時価で会社を承継させたい子などに株式を有償譲渡します。

 そうすることで、たとえ、将来、会社の株価が上がっても、遺留分の基礎財産とはなりません。

 

 会社のオーナーの方ですと、会社経営を渡したくないという思いもあり、株式を譲渡することに躊躇される方もいらっしゃいます。その場合、事業承継で民事信託を使うスキームもあります。

会社経営を渡したくない場合、会社の株式譲渡前に、【議決権がない株式】と【議決権がある株式】に分け、ご自身は【議決権がある株式】を持っておかれ、遺言でその株式を相続させることもご検討ください。

 【議決権がある株式】の割合を下げておくことで遺留分対策をし、相続財産となる株式(【議決権がある株式】)が遺留分算定の対象となっても、金銭の支払いによって対応すればよいのです。

3 「退職手当金等」の活用

 国税庁のHPによれば、「退職手当金等」とは、「被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といいます。)」とあります。

 

 被相続人が亡くなられた際の「退職手当金等」については、「死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど、受給権者の範囲、順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合には、右死亡退職金の受給権は、相続財産に属さず、受給権者である遺族固有の権利である。」最高裁昭和55年11月27日判決)と判示されています。

 

 つまり、勤務先に、退職金規程に死亡退職金の定めがあり、受取人指定がしてあれば、その受取人の固有財産となり、相続財産とならないわけです(もっとも、受取人指定の生命保険と同様に特別受益となる場合もありえます。)。

 遺留分対策として考えたときに、ご自身がオーナーである法人について、受取人指定の死亡退職金規程を設けておくことも対策の一助として考えられます。

 私見としては、あくまでも、ワンオーナー等小規模で事業を営んでいる方には有効と考えています。

4 「小規模企業共済」の活用

 また、「小規模企業共済」をかけておくことも遺留分対策として有効な場合があります。

 「小規模企業共済」は、小規模企業共済法10条に受給権者の範囲と順位が定められています。

 そのため、被相続人が亡くなられるまで事業を継続し、お亡くなりになった場合、「小規模企業共済」は、原則として相続財産にあたらないため、遺留分対策となりえるわけです。

5 さいごに

 遺留分対策では、まずは「遺言作成」が重要です。

 そして、以上のように、相続財産にあたらないと考えられている事項(受取人固有の財産)を探しだし、それを対策に活用することも考えられます。

 また、時期により適正評価で財産の譲渡ができないか、経営をしたいという希望を叶えながら、対象財産を減らすことができないかを総合的に考えていくことになります。

 そのため、遺留分対策をご検討の際には、まずは相続案件を扱う弁護士にご相談されることをご検討ください。

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