遺留分制度の概略について①
1 はじめに
今回は「遺留分侵害額請求」の概略について説明をさせていただきます。
遺留分制度は、相続財産のうち、その一定割合を一定の相続人に保障する制度です。
この「遺留分侵害額請求権」は、相続が発生してはじめて認められます。
遺留分権利者は、相続開始前に、家庭裁判所の許可を得て遺留分放棄をすることはできます(民法1049条1項)。
一方で、相続開始後の遺留分の放棄については、遺留分権利者は、家庭裁判所の許可なく自由にできます。
2 「遺留分権利者」について
● 「遺留分権利者」は、被相続人の配偶者、子(子の代襲相続人)(※)です。
● 子(子の代襲相続人)が法定相続人にいない場合には、直系尊属(被相続人の父母等)も遺留分権利者になります。
<注意> 被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1042条)。
(※)被相続人死亡時、胎児であった場合は、生きて生まれてくれば、遺留分権利者となります。
3 「遺留分の割合」について
● 直系尊属(被相続人父母、祖父祖母等)のみが相続人である場合
→ 相続財産の価額のうち、各法定相続分×1/3が、遺留分の割合となります。
● それ以外の場合(相続人に、子(代襲相続人)、配偶者がいる場合)
→ 相続財産の価額のうち、各法定相続分×1/2が、遺留分の割合となります。
<例>
被相続人(夫)には、相続人として妻、長男(被相続人死亡前になくなっている)の子3人、長女がいます。
被相続人が、妻に全財産を相続させる遺言を作成しており、妻が相続することになりました。
その場合、
長男の子は各人:1/12(法定相続分)×1/2=1/24
長女:1/4(法定相続分)×1/2=1/8
となります。
それぞれの個別的遺留分を、妻に対して遺留分侵害額請求をおこなうことになります。
※ なお、遺留分侵害額請求の時効については、「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」(民法1048条)となっています。
4 さいごに
近年、遺言書を作成される方も多くなっており、遺言書によって不公平を感じる方から「遺留分侵害額請求」のご相談されるケースも多くなっております。
遺留分について関心がおありの方は、相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。