お亡くなりになった後、ご自身の希望をかなえるために(死後事務委任契約)

文責:弁護士 岡﨑伸哉

作成日:2024年03月30日

1 はじめに

 法律相談をいただく中で、「ご自身が亡くなられた後に、親族の中に葬儀・納骨、賃貸物件の片付け、借金の支払い等を執り行う者がおらず、どうすればいいか」というご相談を受けることがあります。

 そうした事務を第三者に依頼することを一般的に『死後事務委任契約』といいます。

 高齢化とともに孤独死の社会問題化も以前より顕在化しており、死後の事務を第三者に任せる『死後事務委任契約』のニーズが高まっているのも事実です。

 そこで、『死後事務委任契約』の概略についてご紹介をさせていただきます。

2 『死後事務委任契約』の概略

 『死後事務委任契約』について、業務内で検討されるものとして以下のようなものがあげられます。

   ① 葬儀に関するもの

     ● どういった葬儀を執り行いたいか

     ● 埋葬・供養はどのような形に指定したいか

   ② 行政手続きに関するもの

     ● 死亡届の提出

     ● 年金の受給資格の抹消等

   ③ 負債に関するもの

     ● 税金の支払い

     ● 病院・介護施設に関する支払い

     ● 賃貸不動産の契約の解除や明渡し手続き

     ● 水道光熱費・電話等公共料金の支払いと解約手続き

   ④ その他

     ● ペットがいる場合、ペットをどうするか

     ● 動産の処分

     ● パソコン・携帯電話の個人情報の抹消

3 『死後事務委任契約』と遺言との関係

⑴ 『死後事務委任』の中で、遺言と抵触することもあり、注意が必要となります。

  たとえば、“動産の処分”を『死後事務委任契約』内において契約していたとします。

  そして、その動産が高価な宝石や車両だったとします。

  その場合、遺言の内容(「全て相続する」等)と『死後事務委任契約』が抵触するため、どちらを優先させるかという問題が生じます。

 

⑵ こうした場合、『死後事務委任契約』と遺言の抵触する内容について後になされたものを優先するという考え方もありえます。

  しかしながら、両者が抵触した場合、確固とした考え方が確立しているわけではありません。

 

⑶ そこで、『死後事務委任契約』と遺言については、その内容が抵触しないように、弁護士等の専門家にご相談の上、作成をするほうがよりよいといえます。

4 さいごに

 『死後事務委任契約』は弁護士等の専門職以外にも金融機関等でも力を入れていることもあり、今後、より一般的になっていくことが予想されます。

 比較的お元気なうちに、相続案件にも慣れた弁護士等の専門職にご相談をされることをオススメいたします。

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