相続人が「未成年」または「成年被後見人」の場合の相続放棄について
1 はじめに
相続放棄をするために熟慮期間の起算点について、「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に相続をするか相続放棄をするかを選択しなければいけません。
そこで、今回は、相続人が「未成年」または「成年被後見人」の場合、上記熟慮期間の起算点はどのようになるのかご紹介したいと思います。
2 相続放棄の起算点は、法定代理人が基準となること
民法917条は、「相続人が未成年者または成年被後見人であるときは、熟慮期間は、相続人の法定代理人が、相続人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」としています。
法定代理人が、相続人本人のために情報を得て、本人のために相続をすべきか判断することを可能にしています。
3 法定代理人が共同相続人である場合の注意点
法定代理人が共同相続人である場合には、相続放棄においても注意が必要となります。
<事例>子が成人前に親のうち1人が亡くなった場合
父親・母親・未成年の子Aの家族構成で父親が亡くなった。
この場合、親権者である母親が未成年の子について相続をするか否か判断することになるのでしょうか?
→ 母親及び子が相続放棄をする場合には、母親が子の法定代理人として相続放棄できます。
典型的なケースとしては、父親について負債が多い場合、母親も子供も相続放棄をするケースが多いのではないでしょうか。この場合、子らの利益のためにも相続放棄をすることがよいということになります。
もっとも父親の資産にかかわらず、法定代理人と未成年の子全員で相続放棄というケースでは、法定代理人による相続放棄が可能となります。
次に、母親・子の全員が相続放棄をしない場合はどうでしょうか。
→ この場合、考えられる例として、父親に資産がある場合、母親が子については相続放棄をし、母親自身が自分の取得する遺産を増やす可能性もあります。
そこで、未成年者と法定代理人である親権者が相続人である場合、相続放棄を両者がしない場合には、利益相反関係が生じるため、その法定代理人は未成年者を代理して相続放棄をすることができなくなります。
子については、家庭裁判所に対し「特別代理人」の選任申立てを行ない、特別代理人が子の相続について相続放棄をするかどうか判断することになります。
4 さいごに
実務上、相続放棄については、色々な考慮をすべきケースがあります。
こうした案件でお困りであれば、相続案件にも慣れた弁護士にご相談だけでもご検討されることをオススメいたします。