遺言の有効性(遺言能力について②)
1 はじめに
「遺言の有効性(遺言能力について①)」では、遺言能力(遺言の内容を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力)についてご紹介をさせていただきました。
今回は、「遺言の有効性」について、判断プロセスを中心にご紹介をさせていただきます。
2 「遺言の有効性」について争う場合
⑴ 「遺言の有効性」についてご相談を受けるケースで多いのが、被相続人である父または母が、子のうち一人だけに財産を全て遺言書で相続させるケースです。
相続財産を受け取れなかった別の相続人の方(子)には不公平感とともに、「財産を受け取ることになった子が親に遺言書を書かせたのではないか?」との疑念を持ちます。
遺言書の作成当時、被相続人の親は認知症になっているケースもあり、なおさら疑念を募らせることになります。
⑵ そこで、「遺言の有効性」を判断する上で、業務において確認している判断のプロセスをご紹介させていただきます。
① まず、遺言書が「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」かを確認します。
「自筆証書遺言」であっても、法務局での「自筆証書遺言保管制度」を利用している場合、「公正証書遺言」に準じる形で考えます。
② 「自筆証書遺言」の場合、被相続人自身が実際に書いたか否かの筆跡を確認します。
③ 遺言書の作成時に、作成者の方の認知症やアルツハイマー病等が疑われる場合、作成前から死亡時までの以下ⅰ)からⅲ)の医学的、福祉サービス上の記録を取り寄せ、遺言能力を判断する基礎資料とします。
ⅰ) 医療記録(診療録、カルテ等)
ⅱ) 介護認定記録
取り寄せ先:自治体
「要介護認定等に関する記録の開示依頼書」によって取り寄せる。
(参考・「広島市の要項・申出書」)
ⅲ) 介護記録
取り寄せ先:介護事業者
介護記録や介護計画等
④ 上記の①②③とともに行ないますが、以下の聞き取りも当然に行ないます。
● 遺言者と各相続人の人的関係性
● 遺言の作成動機(誰が親の主たる介護を行なっていたか等)
● 遺言内容の検討
以上を踏まえ、遺言者に遺言能力があったか否かを判断することにしています。
3 さいごに
遺言は故人の意思でもあり、必ずしも法定相続分どおりに遺言書が作成されるわけではありません。
そのため、遺言書の内容によっては、不公平感、兄弟姉妹仲の悪化を招きかねません。
その遺言が、遺言者が認知症であった場合など、遺言の有効性について疑念をもたれるのも当然です。
こうした案件でお困りであれば、遺言の有効無効など相続案件にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。