遺産分割協議に付随する問題(遺産から生じる賃料は誰が取得するのか。)
1 はじめに
不動産投資が注目されていますが、遺産の中に、マンション、アパート、駐車場などの収益物件があり、それに関連する問題についてご相談を受けることが多いです。
今回は、マンションなどの収益物件について、相続において、その賃料は誰が取得するのかについてご紹介をさせていただきます。
2 「遺産から生じた賃料」について(相続開始前、遺産分割協議成立後)
⑴ 相続開始前に生じた賃料
→ この賃料は、相続財産になります。
⑵ 遺産分割が終了した場合の賃料
→ 遺産分割協議終了時(または、審判確定時の翌日)からは、遺産分割によって各不動産を取得した各相続人にその後発生する賃料を取得する権利があります。
⑶ <事例>
令和4年1月1日 被相続人死亡。
相続財産の中にアパートが1棟あり。
そのアパート1棟では、月額30万円の賃料収入を得ていた。
相続人は、子が3人(長男、長女、次男)。
令和5年9月30日に、遺産分割協議が成立した。
アパートは長女が取得することになった。
<事例での結論>
【相続開始前に生じた賃料】
→ 令和3年12月31日までの賃料は、相続財産になります。
【遺産分割が終了した場合の賃料】
→ 令和5年10月1日以降の賃料は、アパートを取得した長女さんのものになります。
3 「遺産から生じた賃料」について(相続開始から遺産分割協議成立まで)
⑴ 相続開始時から遺産分割協議が終了するまでの間の賃料は誰が取得することになるのでしょうか。
これについては、最高裁判所第一小法廷平成17年9月8日において、以下の判断がなされています。
(裁判の要旨)「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。」
⑵ この判例が述べるように、遺産分割終了時までに遺産から生じた賃料は、遺産ではないのです。
なお、相続人のうち誰かが賃料を一人占めしている場合、話し合いでの解決が難しいのであれば、家庭裁判所の遺産分割調停ではなく、地方裁判所や簡易裁判所に対して訴え提起をすることになります。
ただし、遺産分割調停の中で賃料の帰属について話し合うことを相続人全員が合意した場合には、付随事項として遺産分割調停手続きにおいて話し合うことが可能です。
⑶ 上記の事例では、令和4年1月1日 被相続人死亡時(令和4年1月1日)から令和5年9月30日までの賃料(月額30万円 21ヶ月分 合計630万円)は、法定相続分(各3分の1)によって、
長男 210万円
長女 210万円
次男 210万円
をそれぞれ取得することになります。
ただし、相続人間でその分配額について別途の合意をした場合には、この限りではありません。
4 さいごに
遺産分割協議において、相続財産の中にアパートなどの収益物件があるケースは頻繁に問題となります。
別途で述べさせていただきますが、収益物件自体の評価方法とともに、賃料の帰属、経費の精算をどうするかは話し合いのテーマとなります。
こうした案件でお困りであれば、相続案件にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。