遺産分割協議とは? その進め方について(遺産の評価基準はいつ?)
1 はじめに
『遺産分割協議』の進め方について基本的な内容のご紹介をさせていただきたいと思います。
『遺産分割協議』をおこなう前提としては、
③ 遺産の評価を行なう。
④ 具体的相続分を決める。
があげられます。
今回は、「③遺産の評価を行なう。」について、遺産の評価の基準はいつなのか?の紹介いたします。
2 「遺産の評価基準時」について
「②遺産の範囲」で決めた遺産について、その遺産の「評価基準時」について相続人間で決めていくことになります。
遺産の評価の基準時につきましては、「相続開始時(被相続人が亡くなった時)」と「遺産分割時」との2つの考え方があります。
「遺産分割時」によることが実務の大勢と言われていますが、当事者間で話し合うとき、遺産分割調停で話し合うときなどは、預貯金などは「相続開始時」で決めることが多い印象を私自身は持っています。
不動産の評価については、固定資産税評価額や路線価、公示価格など公の客観的評価基準に基づいて判断する場合には、「相続開始時」でもわかりやすいのですが、『評価方法』について争いがある場合などは、「相続開始時」の評価を得ることが困難な面があります。
実務的に「遺産分割時」による理由は、異なる遺産を取得する相続人がいる場合、<相続開始時>と<遺産分割時>とで、価値の変動が生じている、維持されている相続人間で公平が害されるからということからです。
ここ30年程度の日本では、預貯金などの貨幣価値の変動はあまりありません。「相続開始時」と「遺産分割時」とで金銭的価値はあまり変わりません。
高度経済成長期など物価変動が激しい場合、相続開始時の1万円と遺産分割時とで物の価値が異なることがありえます。
不動産・株式についても価値変動が激しいため、相続人間の不公平感が生じることが考えられます。
そのため、相続人間の公平を考え、実務的には遺産の評価時点を「遺産分割時」とする考え方によっています。
3 「遺産の評価基準時」(特別受益の場合)
『特別受益』の評価基準がいつなのか?についても問題となります。
たとえば、生前に受けた贈与について、物価変動、不動産の価格変動がある場合など、いつの時点で評価するのかという点で問題となるのです。
これについては、「相続開始時」を基準とするのが実務的な考え方となります(最判昭和51年3月18日判決)。
金銭贈与時と相続時の貨幣価値換算については、消費者物価指数を参考にして貨幣価値を計算することになります。
4 さいごに
相続財産の評価につきましては、別途、『相続財産の評価方法』を説明いたします。
遺産分割協議において、相続財産の評価は頻繁に問題となります。
そのため、相続案件にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。