遺産分割協議とは? その進め方について(遺産の調査)
1 はじめに
『遺産分割協議』の進め方について基本的な内容のご紹介をさせていただきたいと思います。
『遺産分割協議』をおこなう前提としては、
① 相続人を確定させる。
② 遺産の範囲を確定させる。
③ 遺産の評価を行なう。
④ 具体的相続分を決める。
があげられます。
今回は、「②遺産の範囲を確定させる。」についてご紹介いたします。
2 「②遺産の範囲を確定させる」ための調査<調査の取りかかり>
当然ですが、同居をしている親族がいる場合には、親族が把握していることが多いです。
被相続人の居宅内の資産、被相続人宛の郵便をまずは手掛かりにします。
また、相続税の申告が必要とされる場合には、「相続税申告書」も手がかりにします。
3 「②遺産の範囲を確定させる」ための調査<不動産>
不動産については、毎年5月頃に自治体から届く「固定資産税納付通知書」に被相続人が納税義務を負う不動産の一覧が掲載されており、それを手掛かりにします。
ただし、注意点もあります。過去の相続が未了の場合や共有持分を持っている場合などで納税義務者でない場合は、「固定資産税納付通知書」が届かないため、不動産を相続財産として見過ごす可能性があります。
「固定資産税納付通知書」がない場合には、自治体で「固定資産課税台帳(名寄せ帳)」(参考・広島市HP)を取り寄せて、不動産の一覧を把握します。
4 「②遺産の範囲を確定させる」ための調査<預貯金>
● まずは、被相続人の居住家屋内にある通帳を手掛かりにします。
同居の親族(夫、妻、子ら)がいれば、簡単に把握できることが多いです。
また、農業をされている方であれば、農協に資産があることが推測されます。
● ところが、昨今は、ネットバンキング専業だけでなく主要銀行で通帳を発行せずスマホ等で電子的に口座管理をすることが進んできています。
また、独居の方も増えてきており、生活を共にすることでの財産の手がかかりが得られないケースも増えてきています。
● そうした場合、
・ 財布の中に金融機関のATMキャッシュカードがないか探します。
・ スマホのロックを解除できるのであれば、金融機関のアプリを手掛かりにします。
・ パソコンのネットバンキングであれば、パソコンをパスワードで開くことができるか、また金融機関のサイトがお気に入りに残っていないか、サイトのID、パスワードがメモ等に残っていないか探します。
・ 口座開設時の金融機関から受け取った書類が残っていないかも探します。
・ そうした手がかりになるものがなければ、郵便局、近隣の銀行、コンビニ利用が見受けられる場合にはコンビニ直系の銀行等に全件調査することも検討します。
5 「②遺産の範囲を確定させる」ための調査<生命保険>
● まずは、居宅に生命保険の証券、かんぽ生命の証券、農協の共済の証券がないか探します。
通帳の口座履歴に生命保険の手がかりがないか探します。
● また、「一般社団法人生命保険協会」では、被相続人が保険契約者または被保険者保険となっている生命保険の有無を、同協会に登録してある保険会社に一括で確認する制度があります(「生命保険契約照会制度」)。
「生命保険契約照会制度」を利用し、生命保険協会からの回答を得て、契約が有ることが判明した場合、該当の保険会社に個別に契約の詳細について照会をかけ、相続財産を調査します。
6 「②遺産の範囲を確定させる」ための調査<有価証券>
有価証券の種類としては、株式、社債、投資信託が主なものです。
証券会社からの「配当通知書」や「総会の招集通知」、「株主通信」を手がかりにします。
また、銀行の預貯金口座の取引履歴に配当金が入金されている場合も手がかりとします。
被相続人が利用をしていた証券会社に問い合わせることが多いのですが、「一般口座」と「特定口座」で異なる扱いを指示されることがあります。
7 さいごに
「相続財産の調査」につきましては、今後、別に個別に述べさせていただく予定です。
「遺産分割協議」を前提として、相続人の調査、相続財産の調査についても弁護士業務として行ないます。
そのため、相続案件(相続財産の調査)にも慣れた弁護士にご相談をされることをオススメいたします。