相続で問題となる『特別受益』について
1 はじめに 2 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(結婚に関して) 3 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(生命保険) 4 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(住宅購入資金) 5 さいごに
1 はじめに
相続(遺産分割、遺言など)についてご相談を受ける際、『特別受益』についてはよく問題となります。
『特別受益』の内容については、遺贈、及び、婚姻・養子縁組・生計の資本として生前贈与を受けたこととされています(民法903条)。
そこで、『特別受益』について、比較的よく問題となる事項をもとに説明をさせていただきます。
2 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(結婚に関して)
● 結婚の際の支度金、結納金、挙式費用
結婚をする際、ご両親に結納金や挙式費用を援助される方は多いのではないでしょうか。
<婚姻の支度金>
特別受益に含まれます。
<結納金>
親から子(推定相続人)への贈与というよりも、結納の相手方の親に対する贈与とするのが相当と考えられているようです。
<挙式費用>
挙式に関して親がみずからのために費やした契約費用とそれぞれ考えるのが相当というのが有力な考え方のようです(潮見佳男「詳解 相続法」200頁 参考)。
以上を踏まえると、<婚姻の支度金>は『特別受益』に該当し、<結納金>や<挙式費用>は、『特別受益』に該当しないということになります。
※ ここで注意点もあります。
『特別受益』にあたるかに否かは、贈与金額、遺産総額、他の相続人との公平、被相続人の経済状況など総合的に考慮して判断される傾向があります。
そのため、結婚の際の金員についても、この傾向が該当することがあることはご留意ください。
3 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(生命保険)
● 生命保険金
相続人のうちの一人が受取人とされている生命保険金請求権は、原則として相続財産を構成しません。
そうなると、保険金を受け取る相続人と受け取らない相続人との間に不公平が生じます。
そこで、最高裁判所が平成16年10月29日した判決では、共同相続人間の不公平が、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合には、生命保険金を『特別受益』とすることがありえるとしています。
例としてあげると、遺産が1000万円、受取人指定の生命保険が2000万円あった場合、あまりにも共同相続人間で不公平なため、生命保険2000万円も『特別受益』に該当することがありえるということです。
4 『特別受益』になるかどうか問題となるもの(住宅購入資金)
● 住宅購入費用の援助
お子さんが居住用住宅を購入する際、親からの援助があるケースも多いです。
こうした生計の資本となる住宅購入費用の援助(贈与)は、『特別受益』に該当します(特に、祝い金とは評価されない多額の援助。)。
実際の遺産分割協議・遺留分を協議する場面では、実際に「いつ、どの程度の額が渡されたのか」について立証の場面で困ることもあり、こうした生前贈与の内容を立証に耐えうる形で残しておくことも大事といえます。
5 さいごに
「遺言」の作成にも関連しますが、『特別受益』につきましては、今後も回を分けてご説明をさせていただきます。
遺言書の作成にあたり、『特別受益』や『遺留分』に配慮した遺言書を作っておくことが、“争続”を防ぐことにもつながります。
相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメいたします。