遺言の基本的な書き方(相続分を指定する遺言)
1 はじめに
「遺言」についての具体的な書き方について、気になる点をシリーズでご紹介をしていきたいと思います。
仕事で「遺言書」を見る機会は多いのですが、遺言書の中には、例えば「遺言者は、次のとおり相続人の相続分を指定する。長男に3/4、次男に1/4」という遺言もあります。
こうした遺言書は、「相続分の指定」(民法902条)による遺言となります(民法902条1項 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。)。
では、こうした「相続分の指定」による遺言の問題点について、ご紹介をさせていただきます。
2 「相続分の指定」では、あらためての遺産分割が必要
「相続分の指定」については、被相続人の遺産を各人がどれだけの割合で相続するか、を定めているものです。
たとえば、上で述べた「長男に3/4、次男に1/4を相続させる」という遺言では、個々の財産を誰が取得するか決まっていません。
極論をいうと、たとえば、A銀行の預金1000万円、不動産として土地建物(3000万円)がある場合、長男が必ず土地建物を取得するというわけではありません。
長男と次男との(相続人)間で、個々の財産を具体的に誰が相続するかについては、遺産分割協議を経て決めることになります。
上のケースで、次男さんが、土地建物に思い入れがある場合はどうでしょうか。
納得できない次男遺産分割協議は、紛糾するおそれがあります。
このように、「相続分の指定」による遺言には問題点があります。
3 「相続分の指定」は、債権者からの請求を拒絶できないこと
被相続人が相続開始時に、借金などの債務(相続債務)を負っていた場合、債権者は、上記のような遺言により「相続分の指定」による遺言があった場合でも、各相続人に対して、法定相続分に応じてその権利を行使して、請求をすることができます。
上記の例では、長男3/4、次男1/4ずつ、債権者が請求するのではなく、次男に1/2を請求することも可能です(民法902条の2)。
次男としては、自身が多く払った分を改めて長男に請求する手間がかかってしまいます。
4 さいごに
「遺言」の作成について、「相続分の指定」による遺言は、簡易なのですが、すでに述べたように問題が生じることもありえます。
せっかく作成する「遺言」なのですから、その内容をどうするか、という点においても相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメします。