「公正証書遺言」作成の補助に弁護士等の専門家を依頼すべきか
2 遺言公正証書での公証人の関わり
「公正証書遺言」は、公証人が作成します。
公証人は、元裁判官や元検察官の方がほとんどです。
そうであれば、『法律の専門家である公証人の方に、「公正証書遺言」の作成については内容も含め、全て相談して作成していけばいいのではないか』と思われる方もいらっしゃると思います。
公証人は、事実や契約の成立を証明・認証することが本来的な職務です。具体的な相続の法律相談にのることが公証人の本来的な職務ではありません。
そのため、遺言の作成に関し、生前の対策、相続税の対策、具体的な内容等ご自身の色々な希望を叶える場合には、いきなり最初から公証役場に行くというのが必ずしも得策というわけではないと思います。
3 「公正証書遺言」作成の流れ
遺言を作成しようと思う場合には、
① ご自身の法定相続人が誰か、相続財産はどのようなものがあるか、を確認します。
② その後、相続財産を誰に渡すか、を考えます。
法定相続人、それ以外の方なのか。
それ以外の方ということであれば、親戚、お孫さん、お世話になった方、施設、自治体などが考えられます。
財産の渡し方によっては、遺留分を持つ法定相続人から遺留分侵害額請求をなされる可能性もあり、ご自身が亡くなられた後、紛争が起こることもありえます。
また、生前の対策や相続税など法的・税的なことの検討が必要となります。
そのため、公正証書遺言を作成されるにあたっても、まずは、弁護士等専門家に、事前に遺言の内容を相談し、専門家によるスクリーニングを経て、その上で公証役場にて遺言を作成されることをおすすめ致します。
4 「公正証書遺言」における遺言能力の判断
「公正証書遺言」については、証人2人以上の立会や遺言公正証書作成時に、公証人が遺言者の判断能力を質問等にて確認をしています。
そのため、遺言無効確認の訴えなど、後の紛争を予防することに役立ちます。
とはいえ、公正証書遺言を作成すれば、完全に万全というわけではありません。
公正証書遺言でも内容が明確でないものもありますし、遺言を作成する能力の点で、遺言が無効となる例もあります(自筆証書遺言における遺言無効の争いと比べると、まれではあります。)。
たとえば、東京地方裁判所平成11年9月16日判決は、遺言者が遺言の当時パーキンソン病による痴呆の影響などから遺言能力を欠き、公正証書遺言が無効であるとし、仮に遺言能力があったとしても、口授の要件を欠くとして、公正証書遺言が無効であるとされました。
このように、遺言書作成にあたり、公証人の方も質問等はされるのですが、公証人によって完全に遺言能力が判断されるわけではありません。
5 さいごに
「公正証書遺言」につきましては、遺言の内容の精査など事前の準備が必要となることも多いです。
そのため、遺言の内容をどうするか、後の紛争をどうやって防止するのかという点においても弁護士に事前にご相談をされることをおすすめいたします。