遺言の作成(公正証書遺言)について
1 はじめに
前回、「遺言の概略」と「自筆証書遺言」について紹介をさせていただきました(前回記事「遺言の作成(自筆証書遺言)について」)。
「遺言」といえば、「①自筆証書遺言」と「②公正証書遺言」が代表格という印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
今回は、代表的な遺言の一つ「②公正証書遺言」について説明をさせていただきます。
2 公証人ってどんな人?
「公正証書遺言」は、公証人が作成します。
「公証人は、国家公務員法上の公務員ではありませんが、国の公務である公証作用を担う実質的な公務員です。
公証人は、原則として、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった者で、公募に応じたものの中から、法務大臣が任命しています(公証人法第13条)」(日本公証人連合会HP)。
広島県内には、6箇所の公証役場(広島市、東広島市、呉市、尾道市、福山市、三次市)があります(公証役場一覧)。
3 「② 公正証書遺言」について
「公正証書遺言」の作成については、証人2人以上の立会が必要であること(手数料を別途支払う必要がありますが、公証役場に相談しておくと、作成時に証人の用意をしておいてくれます。)、遺言される方が遺言の趣旨を公証人に伝えること(口授)が必要となります。
「公正証書遺言」は通常、公証役場で作成をします。
出張費が別途かかりますが、公証人に出張してもらって「公正証書遺言」を作成することも可能です。ご高齢の方、入院中の方、施設入所の方にはそちらの方が便がいいと思います。
「公正証書遺言」は、事前の事務的な用意が若干面倒なこともありますが、法務局保管を除く「自筆証書遺言」と違い、死後の”家庭裁判所の検認手続き”が不要です。
また、「公正証書遺言」の原本が公証役場に保管され、紛失の危険性がありません。
(平成元年以降作成の「公正証書遺言」につきましては、全国の公証役場で遺言の存在を検索することが可能です。「公正証書遺言の検索システム」)
「公正証書遺言」作成時に、公証人が遺言者に質問をするなどして、遺言者の判断能力を確認しています。
そのため、"遺言無効確認の訴え"などの予想される紛争を予防することに役立ちます。
一方で、【自筆証書遺言の法務局保管制度】には、公正証書遺言にないメリットもあります。
そのメリットの一つが、「遺言者が指定した方への通知(指定者通知)」です。
「遺言者が指定した方への通知(以下「指定者通知」といいます。)は、戸籍担当部局と連携して遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合に、あらかじめ遺言者が指定した方1名に対して、遺言書が保管されている旨をお知らせするものです。なお、この通知は、遺言者が希望する場合に限り実施します。」(法務省HP)
この制度を利用することで、遺言者死亡を把握した戸籍担当部局からの情報により、遺言書保管官から指定された方(例 遺言執行者など)に遺言者が死亡した事実を知らせることが可能となります。
4 さいごに
「公正証書遺言」につきましては、遺言の内容の精査など事前の準備が必要となることも多いです。
たとえば、”遺留分侵害額”に配慮した遺言を作成することで、遺言者死亡後の紛争を防止することなどが期待できます。
そのため、「遺言の内容をどうするか」という点においても相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメします。