相続放棄をする際の債権者・他の相続人への対応
1 はじめに
相続放棄について、よくあるご相談内容についていくつか述べてきました。
「相続放棄後に債権者や他の相続人の方にどうすればいいのですか。」とのご相談を受けることも多いです。
そこで、相続放棄をするにあたって、債権者や他の相続人の方への対応をどうするのかにつきまして、述べさせていただきます。
2 債権者の方への対応
まず、相続放棄を申し立てた家庭裁判所から受け取る「相続放棄申述受理通知書」(再発行不可)か、家庭裁判所に申請を出し取得する「相続放棄受理証明書」のコピーを用意します。
ご自身で把握をされている債権者の方には、相続放棄をした旨(一言、お詫びを添える方もいらっしゃいます。)と上記通知書か証明書のコピーを郵送等で送付します。
債権者の方々も、現在、誰に対して、請求をすればいいのか分からないため、上記の対応をおこなっておきます。そうすることで無用なトラブルをできるだけ避けるようにしていきます。
相続人ご自身がご存じない債権者から請求が来た場合には、その際に上記の対応を都度していくことになります。
3 他の相続人への対応
「相続放棄をした者の責任」については、新しいルールの適用開始時期(施行時期)は、2023年(令和5)年4月1日です(関連記事)。
改正前については、相続財産の占有にかかわらず、相続放棄後、次の相続人に引き継がなければ、管理責任が残ったままでした。
改正後、相続財産の占有をしていた場合のみ、他の相続人や相続財産管理人へ引き継ぐまで保存義務が生じます。
そこで、相続財産の管理(保存)責任の観点や親族間のトラブルを避けるため、ご自身が相続放棄をされた場合、ご自身がご存じの他の相続人やご自身(達)が相続法放棄をすることで相続人になる方(例えば、お父さんが亡くなって、その子供が相続放棄をすると、お父さんの父母やお父さんのご兄弟が次の相続人になるケースです。)に対して、相続放棄をした旨のお手紙でお伝えした方がよいと思います(せめて、普通郵便でなく簡易書留がオススメです。)。
場合によれば、管理すべき財産の存在や把握している負債の額・内容を伝えておいた方が丁寧です。
お父さんが亡くなり、お子さんが相続放棄をする場合、ケースによっては、お父さんのご兄弟やそのお子さんが相続人になります。
事前に連絡なく、債権者からお父さんのご兄弟達に請求が来ると無用な親族間のトラブルを起こすケースがあります。
ご兄弟やそのお子さん達にとっては、「自分たちは関係がないのに」と思っておられるケースも多々あり、相続放棄をせず、相続人のお子さんの方で解決をするように述べてこられることもあります。
しかしながら、債務超過で相続放棄をするケースが多く、今後のことを考えると、相続放棄をしない場合に多大な負債を負うことにもなりかねません。
相続放棄自体、申述書に記載をする欄はありますが、相続放棄の理由が法的な条件ではありませんので、相続放棄を進め、次順位の方に放棄をした旨を伝えていくことがよいと思われます。
4 さいごに
相続放棄のご相談される際には、債権者や他の相続人への対応も踏まえ、相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。