遺言の作成(自筆証書遺言)について

1 はじめに

 今回から、「遺言」についての基礎知識、作成時の注意点も含め、紹介をさせていただきたいと思います。

 日本公証人連合会によると、遺言公正証書の作成件数は、年間約10万件となっており、過去10年間で徐々に作成件数が増えてきたものの、件数自体は現在ほぼ横ばいとなっています(令和3年の遺言公正証書の作成件数について「日本公証人連合会HP」)。

2 遺言の種類(概略)

 遺言には、大きく分けて「普通方式の遺言」と「特別方式の遺言」があります。

 「普通方式の遺言」には、

 ① 自筆証書遺言

 ② 公正証書遺言

 ③ 秘密証書遺言

の3種類があります。

 「特別方式の遺言」には、死亡の危急に迫った者の遺言(危急時遺言)他3種類がありますが、いずれも例外的なものです。

   このうち、今回は「① 自筆証書遺言」について説明をさせていただきます。

3 「① 自筆証書遺言」について

 「① 自筆証書遺言」については、遺言者が遺言の全文(一部例外あり。)、日付、氏名を遺言者自身が書き、押印をすることによって作成する遺言書です。

 自筆証書遺言は、証人が不要ですので、自分1人で作成ができます。

 

 「自筆証書遺言」について、相続法改正前は、遺言者本人の自書が財産目録も含め求められていました。

 しかしながら、相続法の改正(2019年1月13日から)によって、遺言内容を記載する本文と遺言の対象となる財産を記載した財産目録を独立させた場合には、財産目録に関しては自書を要しないと変更されました。これで財産目録に表計算ソフトなどで財産を一覧化したものを印刷して添付することなどが可能となりました(ただし、目録のページごとに遺言者本人が署名・捺印をする必要があります。)。

 

 もっとも、「自筆証書遺言」は以下の懸念点があります。

● 法律で定めた要件を満たさないために無効となったり、記載が曖昧、遺言作成時、作成者の方が認知症を患っておられたときなど、遺言を作成する能力があったか否かについて、紛争を招きやすい側面があるといえます。

 

● また、「自筆証書遺言」は、遺言者がお亡くなりになった後、原則として、"家庭裁判所の検認"が必要となります(意外と手間がかかる印象です。)。

  なお、相続法の改正以後、「自筆証書遺言」については、遺言の法務局保管制度の創設が新たに設けられました(2020年7月10日から)。

  この【法務局保管制度】を利用することで、家庭裁判所の検認を行なわなくてもよくなります。

 

● その他にも「自筆証書遺言」の保管方法については、せっかく本人が遺言書を作成しても、自宅に保管していることを誰も知らない、紛失や隠ぺいがなされたり改ざんされたりするリスクがあります。

 【法務局保管制度】を利用することで、自筆証書遺言の作成者が亡くなられた後、法務局に照会をすることで、遺言の隠蔽を防ぐことに役立ちます。

4  さいごに

 「自筆証書遺言」につきましては、紛争を防止すること、遺言の制度を利用しやすくするために【法務局保管制度】が創設されました。

 【法務局保管制度】につきましても、特に「遺言の内容をどうするか。」、または「手続きをとるのに補助が欲しい。」という点で相続に詳しい弁護士にご相談をされることをオススメします。

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