相続放棄と相続財産の処分

文責:弁護士 岡﨑 伸哉

最終更新日:2023年03月09日

1 相続放棄の流れ

 一般的な相続放棄は、亡くなられた方の相続財産(プラスの財産、マイナスの財産)を法定相続人の方が相続しないために、①亡くなられた方の最後の住所を管轄する家庭裁判所に対して、②相続放棄の申述を、③(法定相続人)自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行うという流れになります。

2 相続放棄ができなくなる相続を承認することって?

 相続放棄ができる期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)に、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには、単純承認(相続の承認)をしたものとみなされます(民法921条1号)。
 相続の承認をすることで亡くなられた方の権利や義務(簡単に言うと、プラスの財産とマイナスの財産、義務)を相続人の方が引き継ぐことになり、相続放棄はできなくなります。

3 相続財産の処分(葬式費用)

 相続放棄のご相談を受ける中でよくご質問を受けるのが、「相続放棄はしたいのですが、亡くなった方の財産から葬儀費用を出してもいいでしょうか?」というものです。
 裁判例をみてみると、葬儀自体は亡くなられた方の人生最後の社会的儀式として必要性が高いことや葬儀を執り行うことは相続を承認することとは無関係に遺族が行なう行為と考えられるので、“相続を承認する行為”にはあたらないとしている裁判例もあります。

 お葬式が、社会常識に照らしてあまりにも華美であるなどの場合を除いて、亡くなった方の財産から葬儀費用を支払う行為は、相続を承認する行為にはあたらないといえます

4 相続財産の処分―債務を支払うこと

 亡くなられた方の負債を支払う場合、①亡くなられた方の財産から支払う場合と、②相続人の方がご自身の財産から支払う場合に分けて考えることになります。
 ①亡くなられた方の財産から支払う場合は、相続を承認することに当たるため、相続放棄をすることができなくなります。
 一方で、②相続人の方がご自身の財産から支払う場合、過去の裁判例では、相続放棄を承認することにはあたらないと判断しているものもあります。
 裁判例が少ないことや理屈上完全に該当しないともいえないことには注意が必要ですが、②の場合には、相続放棄が認められる傾向にはあるといえます。

5 さいごに

 相続放棄のご相談を受けていると、その他にも相続財産の中から医療費を払いたい、家を修繕したい、年金の受け取りの手続き、死亡一時金の受け取りは可能かどうか、生命保険の受け取りなど様々なご相談がございます。
 相続放棄のご相談される際には、ベストな解決方法をお知りになりたいと思われますので、相続に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

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